警視庁久松署は2026年3月5日、新型コロナウイルス対策として国から支給された雇用調整助成金を不正に詐取した疑いで、東京都中央区の旅行会社「JCIT」(ジーアイティー)の代表取締役・坂川馨(さかがわ・かおる、56歳、東京都世田谷区下馬在住)と、同社役員で夫の孟偉(もう・い、53歳、中国籍、同住所)を詐欺容疑で再逮捕した。
両容疑者は「申請内容は事実であり、不正受給とは認識していなかった」と容疑を否認している。
警視庁によると、坂川夫妻が経営するJCITは主に中国人観光客向けの旅行事業を展開していたが、コロナ禍で業績が急落。
国の雇用調整助成金制度を悪用し、総額約6億5000万円を不正に受給した疑いが持たれている。
詐取した資金は、都内の自宅マンションや本社ビルの住宅・事業用ローンの返済に充てられていた可能性が高いとみられ、当局は資金の流れを徹底的に追及している。
不正受給の手口と規模雇用調整助成金は、コロナ禍で事業活動が縮小した企業に対し、従業員の休業手当の一部を国が負担する制度。
JCITの場合、実際の従業員数は10人未満だったにもかかわらず、架空の休業手当支払いを装い、多数の「従業員」に手当を支払ったように偽装申請を行っていた。
具体的な再逮捕容疑は、2022年1月から同年6月までの期間に、約60~70人分の休業手当を支払ったとする虚偽の申請により、約1億1000万円を詐取したというもの。
全体の不正受給期間は2020年4月から2023年1月にかけてと長期間に及び、累計で約6億5000万円に達すると警視庁は推定している。
手口の典型例として、実際には勤務していない人物や、休業実態のない従業員を「休業させた」として申請。
給与明細や出勤簿を偽造し、厚生労働省の審査をすり抜けていたとされる。
コロナ禍初期から制度が拡充され、審査が簡素化された時期に悪用が集中したケースは全国的に散見されており、本件もその一例と考えられる。
容疑者夫妻の背景坂川馨は日本人で、JCITの代表として長年中国人向けインバウンド旅行を手掛けていた。
夫の孟偉は中国籍で、同社役員として実務を担っていたとみられる。
夫妻は世田谷区の高級住宅街に自宅を構え、本社も中央区のオフィスビルに置くなど、事業規模に比して資産が充実していた点が、捜査の焦点の一つとなっている。
警視庁は、詐取資金が不動産関連のローン返済に流れていたことを重視。
家宅捜索で押収した資料や銀行取引記録から、助成金入金直後に多額の引き出しや振込が行われていた痕跡を確認したという。
夫妻は「事業資金として適切に使用した」と主張しているが、当局はマネーロンダリングの可能性も視野に捜査を進めている。
事件発覚の経緯と当局の対応本件の発端は、厚生労働省の雇用調整助成金審査過程での不自然な申請件数や、労働局からの情報提供だったとみられる。
警視庁は2025年頃から同社への任意聴取を開始し、2026年に入ってから初回逮捕(詳細時期非公表)を実施。
その後の捜査で追加証拠が積み上がり、再逮捕に踏み切った。
コロナ関連助成金の不正受給は全国で後を絶たず、警視庁をはじめとする警察当局は、2023年以降に摘発を強化。
総額数億円規模の大型事案が相次いでいる。
関連事例として、旅行代理店大手の「旅工房」が2025年に約7億7800万円の不正受給を自主申告・返還したケースや、他の補助金詐取事件(今村元衆院議員の妻再逮捕など)も報じられており、社会的関心が高い。
今後の見通しと社会への影響警視庁は、詐取総額の全容解明と、資金の最終使途(特に不動産取得や海外送金)の追及を継続する方針。
夫妻が中国籍の孟偉を含むため、日中間の司法協力や資産凍結の可能性も指摘されている。
コロナ助成金制度は、事業継続と雇用維持を目的とした緊急措置だったが、審査の甘さや悪用事例が相次いだことで、制度の信頼性が揺らいでいる。
厚生労働省は2024年以降、事後監査を強化し、不正受給者への返還請求や刑事告発を積極化。
2026年現在も、過去の申請に対する調査が継続中だ。
本件のように、数億円規模の不正が長期間にわたって見逃されていた背景には、申請時の書類審査の限界や、コロナ禍での緊急対応が挙げられる。
企業側も、助成金頼みの経営が破綻を招くリスクを改めて認識する必要があるだろう。
一方で、真正に苦境にあった中小企業にとっては、こうした悪質事例が全体のイメージを損ない、正当な受給者への風当たりを強める懸念もある。
当局は「不正は絶対に許さない」との姿勢を強調し、再発防止策の徹底を求めている。
コロナ助成金不正受給で旅行会社代表夫妻を再逮捕 総額約6億5000万円か、警視庁が捜査強化