日本政府が高市政権下で2026年1月に取りまとめた「外国人の受け入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」は、在留管理の厳格化を強く打ち出している。
しかし、この政策は観光客、オーバーツーリズム対策、国外居住者の土地取得規制までを「外国人」として一括りに扱っている点が問題だ。
本来、観光客と定住する外国人住民は、日本社会との関わり方が全く異なる。
ひとくくりにすることで、個別の利害関係や背景がぼやけ、単純な「寛容か制限か」の二元論に陥りやすい。
従来の「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」(2018年特定技能制度創設以降)と比較すると、今回の策は観光や投資関連を加味した拡大版と言える。
外国人住民向けには、日本語教育、子ども教育・就労支援の継続が掲げられている。
一方で、永住資格取得に日本語学習プログラム受講を条件化、帰化時の居住期間延長、在留管理の「適正化・厳格化」が強調され、「秩序ある共生」がスローガンとなっている。
しかし、最大の問題は、労働力人口の急減という現実に対する長期的な受け入れ方針が不明確な点にある。
外国人を一時的な労働力としてのみ受け入れるのか、定住を前提とするのか、将来的に抑制するのか――明確なビジョンが示されていない。
出入国在留管理庁の統計(2006年以降)を見ると、永住資格許可件数は2007年をピークに減少傾向。
近年は3万5000人程度で推移し、許可率も同様に低下している。
帰化許可者数は2003年の約1万8000人をピークに減少し、2010年代以降は1万人前後。
許可率は9割超を維持するが、近年95%を下回る低下傾向が見られる。
在日外国人人口が急増しているにもかかわらず、永住や国籍取得者は増加していない。
筆者研究チームの2018年調査では、外国生まれ外国籍者のうち「日本に永住したい」と答えたのは38.5%。
定住資格保有者に限っても50%未満で、全体ではさらに低い可能性が高い。
OECDデータで各国比較すると、日本は短期・長期労働者と留学生受け入れに極端に偏っている。
ドイツ、フランス、オランダなどは家族呼び寄せや人道的受け入れ(難民)が一定規模あり、イギリスも家族帯同が目立つ。
韓国は短期就労特化型だ。
日本は「移民政策」を取らない姿勢を貫き、一時滞在の長期化を進めている。
これを「一時的な滞在の持続」と呼ぶが、深刻な問題をはらむ。
外国人労働者は非正規雇用割合が高く、国勢調査(2020年)ではブラジル国籍53%、インドネシア45%、ベトナム・ネパール・ペルー40%前後。
日本国籍男性は14%に過ぎない。
非正規は景気悪化時の調整弁となりやすく、リーマンショックやコロナ禍で外国人失業・就労減が顕著だった。
長期化すれば、低賃金・非正規の蓄積で高齢期の年金不足が生じる恐れがある。
さらに、外国人の子どもたちの教育格差が問題だ。
高校進学率は上昇傾向だが、中退率が高く、大学進学障壁が残る。
親世代の低所得・非正規が子ども世代に再生産され、国籍による経済・社会分断が世代を超えて固定化する可能性が高い。
これは欧米の移民社会で繰り返されてきた「分断」の典型だ。
政府は育成就労・特定技能の総量を現状ペース維持とし、積極受け入れを継続。
一方で永住・帰化の道を制限的にしている。
これでは「秩序ある共生」とは言えず、むしろ不安定な定住を強いる構造だ。
真に秩序ある受け入れが必要なら、定住前提を正面から認め、国民に説明し、統合支援体制を整備すべきである。
観光客と住民を混同せず、労働力不足対策と社会統合のバランスを取る長期ビジョンが急務だ。
この政策の曖昧さが、外国人増加(毎年30万人超)と日本人減少(出生数70万人割れ)の狭間で、社会の亀裂を深めるリスクを孕んでいる。